見やすい看板のデザインのコツは、距離・色・情報量です
見やすい看板のデザインは、「見る距離に合った文字の大きさ」「文字と背景の明るさの差」「伝える情報の絞り込み」の3つで決まります。歩く人や車から短い時間で読まれることを前提に、伝えることを絞り、遠くから読める大きさと配色を選びます。
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この記事のポイント
- 01文字の大きさは、読ませたい距離から決めます(10mなら和文40mm以上が目安)
- 02文字と背景は、明るさの差を大きく。避けたい色の組み合わせもあります
- 03伝えることは店名と業種に絞り、細かい情報は近くの看板へ
- 04地域によっては、景観の決まりで看板の色に基準があります
見やすさは、距離・明るさの差・情報量で決まります
看板は、通り過ぎる人に短い時間で読まれます。見る距離に合った文字の大きさ、文字と背景の明るさの差、伝える情報の量の3つを押さえると、デザインの方向が決まります。
見る距離と文字の大きさ
どこから読ませたいかで、必要な文字の高さが決まります。
文字と背景の明るさの差
明るさの差が小さいと、離れたときに文字が背景に溶け込みます。
伝える情報の量
伝えることを絞るほど、一つひとつを大きく見せられます。
デザインというと色やロゴの形に目が向きがちですが、看板の場合は、まず「読めるかどうか」が先にきます。どれほど印象的なデザインでも、読ませたい場所から読めなければ、看板の役割を果たせません。このページでは、公的なガイドラインの目安を使って、読める看板の決め方を順に紹介します。
文字の大きさは、読ませたい距離から決めます
公共施設の案内表示のガイドラインの表では、和文の文字の高さの目安が、見る距離1mにつきおよそ4mm(英文はおよそ3mm)の割合になっています。まず、看板をどこから読ませたいかを決めます。
- 1〜2m和文 9mm以上英文 7mm以上
- 4〜5m和文 20mm以上英文 15mm以上
- 10m和文 40mm以上英文 30mm以上
- 20m和文 80mm以上英文 60mm以上
- 30m和文 120mm以上英文 90mm以上
見る距離1mにつき、和文はおよそ4mm、英文はおよそ3mmの割合です。「木」と「E」の絵は大きさの比べで、実際の寸法ではありません。
出典:名古屋市「福祉都市環境整備指針」(国土交通省の旅客施設のガイドラインの表として掲載)。文字の高さは、日本字では書体の「木」の高さ、アルファベットでは「E」の高さです。
表の値は、その距離から判読できるために通常有効な大きさの目安です。店名を通りの向こう側から読ませたいなら、その距離を地図アプリなどで測ってから文字の大きさを決めると、看板全体の大きさも決めやすくなります。距離を入れて計算するなら、看板の文字の大きさの計算が便利です。
公共施設では、遠くから見る吊り下げ型の誘導サインは20m以上、近くから見る自立型・壁付け型の案内サインは4〜5m以下、案内サインの見出しは10m程度に、見る距離を設定するのが一般的とされています。車から見る看板は読める時間が短くなるため、文字の数を絞り、いちばん伝えたいことを大きくします。
法令・ルール:文字を大きくすると、看板の面積と許可の要否も変わります
自分の店の看板で許可がいらない面積は、たとえば東京都では合計10㎡以下(住居専用地域などでは5㎡以下)、大阪市では1つあたり7㎡以内と、自治体によって違います。文字の大きさと看板の大きさ、設置場所のルールを、あわせて確かめます。
色は、文字と背景の明るさの差を大きく
離れた場所から読めるかどうかは、色の好みよりも、文字と背景の明るさの差で決まります。国土交通省の案内表示のガイドラインには、避けたい色の組み合わせも示されています。
明るさの差が大きい組み合わせ
濃い色の地に白い文字、白い地に濃い色の文字のように、文字と背景の明るさの差を大きくすると、離れた場所からも読みやすくなります。
避けたい組み合わせ(白内障への配慮)
ガイドラインでは、高齢者に多い白内障に配慮して、「青と黒」「黄と白」の組み合わせは用いないとしています。
見分けにくい組み合わせ(色覚の多様性への配慮)
「赤と黒」「赤と緑」「緑と茶色」「黄緑と黄色」「紫と青」などは、見分けにくい色の組み合わせの例として挙げられ、見分けやすい組み合わせを使うよう示されています。
色だけに頼らない
色で区別するときは、文字や記号を添えるなど、色だけに頼らない表示にします。
国土交通省「バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)」(令和7年9月)の考え方をもとにした模式図です。駅などの旅客施設のための指針ですが、見やすい看板をつくる参考になります。
看板や標識の色の組み合わせについては、日本産業規格の JIS S 0033「高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-年齢を考慮した基本色領域に基づく色の組合せ方法」もあります。若い人(20歳代)と高齢の人(60〜70歳代)、明るい場所と薄暗い場所で、色の見分けやすさがどう変わるかをもとに、見分けやすい組み合わせをつくる方法を定めた規格です。
外壁の色と、看板の地の色
看板は、外壁の色を背景にして見られます。外壁と看板の地が同じような明るさだと、看板の輪郭がぼやけます。外壁が濃い色なら明るい地や白い文字、明るい外壁なら濃い色の看板にすると、建物の中で看板が埋もれません。ブランドの色が決まっている場合も、縁取りを入れたり、地の色を変えたりして、明るさの差をつくれることがあります。

蒙古タンメン中本の、赤い外壁に白い文字の店名とロゴマーク 
青い外壁に、白い立体の文字(TRIAL GO) 
黒い地に、明るい色の文字の館名板(SUN PARK)
いずれも、地と文字の明るさの差を大きくとった看板です(グリーンクロスグループが手がけた看板)。
伝えることを絞り、細かい情報は近くの看板へ
一つの看板にすべての情報を入れると、どれも小さくなって遠くから読めなくなります。距離ごとに看板の役割を分け、遠くから見る看板ほど情報を絞ります。
- 遠くから見つけてもらう道路沿いのポールサインや、建物の上の看板。店名とマーク、何の店かだけを大きく見せます。
- 店の前で確かめてもらう建物の正面の看板や袖看板。店名と業種、ひと言の特徴までにします。
- 入口で読んでもらうスタンド看板・ガラス面の表示・プレート。営業時間・メニュー・お知らせなど、細かい情報はここに回します。
道路から入口までを横から見た模式図です。下の帯は、それぞれの看板が受け持つ距離の範囲を表します。
伝える情報の優先順位は、①店名やマーク、②何の店か(業種・取り扱うもの)、③補足(営業時間・電話番号・ひと言)の順に考えると整理しやすくなります。③は、近くで立ち止まって読む看板に回すと、遠くから見る看板の文字を大きくできます。
書体は、遠くから読める太さと形を選びます
国土交通省のガイドラインでは、案内表示の書体は視認性の優れた角ゴシック体が望ましいとしています。店名のロゴの書体を使うときは、大きさと太さで読みやすさを補います。
角ゴシック体
線の太さがそろっていて、小さくなっても形がつぶれにくい書体です。案内表示に向いています。
明朝体・筆文字
線に強弱がある書体は、細い部分が遠くから見えにくくなります。大きく使う、近くで見せるなどの工夫をします。
飾りの多い書体
英字の筆記体などは雰囲気を出せますが、読める距離が短くなります。店の雰囲気と読みやすさの釣り合いで決めます。
それぞれ、右は同じ形を小さくした(遠くから見た)ときの見え方の模式図です。
店名のロゴがすでにある場合は、ロゴの形を変えずに使うのが基本です。細い線や小さな文字があるロゴは、看板の大きさと見る距離で、つぶれずに見えるかを確かめます。ロゴのデータの用意の仕方は、ロゴを看板にする方法にまとめました。
夜も見せるなら、光らせ方までデザインに含めます
夜の見え方は、昼のデザインだけでは決まりません。光らせ方で文字の見え方が変わるため、照明を含めてデザインします。
同じデザインでも、表示面全体を中から光らせると文字が地から浮かび、外から照らすと落ち着いた見え方になります。立体の文字は、正面を光らせるか、壁側を照らすかで印象が変わります。
明るければ明るいほどよい、というわけでもありません。国土交通省のガイドラインでは、屋内のサインの表示面の明るさ(輝度)は、1,000cd/㎡くらいまでは明るいほど文字が読みやすくなるが、それを超えるとまぶしくて読みづらくなる、としています。屋外の看板も、周りの明るさに合わせて考えます。

夕暮れに光る、立体の文字の看板(MODULE BASE) 
夜に光る、建物の上部と壁面の看板(WONDER LAND) 
照明に照らされた、夜のポールサイン(ニトリ)
いずれもグリーンクロスグループが手がけた看板です。
景観の決まりで、色に基準がある地域もあります
地域によっては、景観を守るための決まりで、看板に使える色(彩度)や面積に基準があります。基準が適用される場所は限られるため、設置場所ごとに確かめます。
京都市は、屋外広告物の色をマンセル値の彩度で規制し、規制区域ごとに使える色や面積の割合を定めています。東京都は、景観計画で定めた文化財庭園等景観形成特別地区(浜離宮恩賜庭園・新宿御苑・六義園などの周辺)で、建物の壁面の高さ20m以上の部分に出す自家用の広告物の色を、低彩度を基本とした基準にしています。
0.1R〜10R(赤)
- 表示面積の3分の1を超えて使える色の彩度
- 5以下
0.1YR〜5Y(黄赤〜黄)
- 表示面積の3分の1を超えて使える色の彩度
- 6以下
5.1Y〜10G(黄〜緑)
- 表示面積の3分の1を超えて使える色の彩度
- 4以下
0.1BG〜10B(青緑〜青)
- 表示面積の3分の1を超えて使える色の彩度
- 3以下
0.1PB〜10RP(青紫〜赤紫)
- 表示面積の3分の1を超えて使える色の彩度
- 4以下
出典:東京都「屋外広告物のしおり」(令和8年7月)p.22〜31。浜離宮恩賜庭園・新宿御苑・六義園などの周辺の地区で、建物の壁面の高さ20m以上の部分に出す自家用広告物の基準です。
法令・ルール:色の基準は、設置場所ごとに確かめます
景観の色の基準は、全国共通の決まりではなく、自治体や地区ごとに違います。看板のデザインを決める前に、設置場所の自治体の景観や屋外広告物の担当の基準を確かめます。
デザインを頼むときに伝えること
デザインを頼むときは、色や形の好みより先に、看板を置く場所と、誰にどこから読ませたいかを伝えると、見やすさを優先した提案を受けやすくなります。
デザインを頼むときに伝えること
- 設置場所の写真と、読ませたい場所(通りの向こう・車から・店の前など)
- 伝えたいことの優先順位(店名・業種・ひと言など)
- ロゴや店名のデータと、ブランドの色の指定(あれば)
- 外壁の色(写真で分かれば十分です)
- 夜も見せたいか(営業時間)
- 近くに並ぶ看板や、建物の雰囲気
- 多店舗の場合は、デザインの基準(ロゴの使い方・色・余白)

よくあるご質問
看板の文字の高さは、どのくらい必要ですか?
読ませたい距離で決まります。公共施設の案内表示のガイドラインの目安では、和文の文字の高さは、10mなら40mm(4cm)以上、20mなら80mm(8cm)以上、30mなら120mm(12cm)以上です。距離からの計算は「看板の文字の大きさの計算」で試せます。
見やすい看板の色の組み合わせは?
文字と背景の明るさの差を大きくすることが基本です。濃い地に白い文字、白い地に濃い色の文字のように組み合わせます。国土交通省のガイドラインでは、白内障への配慮として「青と黒」「黄と白」の組み合わせは用いないとしています。
店名のロゴの書体は、看板にも使えますか?
ロゴの形をそのまま使うのが基本です。細い線や小さな文字がある場合は、看板の大きさと見る距離で、つぶれずに見えるかを確かめてご提案します。
看板に入れる情報は、どのくらい絞りますか?
遠くから見る看板ほど絞ります。道路から見る看板は店名と何の店か、店の前の看板は業種やひと言まで、営業時間やメニューは入口の近くの看板に回すと、どの看板も読みやすくなります。
景観の決まりで、使えない色はありますか?
地域によってはあります。京都市のように規制区域ごとに色の彩度の基準を設けている自治体や、東京都の景観形成特別地区のように、特定の地区で基準を設けているところもあります。設置場所の基準を確かめてからデザインを決めます。
自分で作ったデザインで、看板を作れますか?
作れます。データの形式や色の指定を確かめ、看板の大きさや素材で見え方が変わるところがあれば、ご提案します。
参考にした資料
この記事について
全国看板施工・点検ナビ
運営:GREEN MEDIA(株式会社グリーンクロス グリーンメディア事業部)
監修:横田悠介(屋外広告士)
看板の製作・施工・点検・修理・撤去を、全国61拠点のネットワークで行っています。記事は、屋外広告士の監修のもとで作っています。記事の中の法令や自治体のルールは、国や自治体が公表している資料で確かめた内容で、使った資料は記事の最後に載せています。公開する前と、内容を直すときには、資料と照らし合わせて確かめています。写真は、グリーンクロスグループが手がけた看板と、グループの工場・施工の現場で撮影したものです。




